【初心者向け】バリュー株投資とは?50億円稼いだ投資家の手法を3種類に分けて徹底解説
- バリュー投資の基本と3つの種類
- 資産・収益・シクリカルバリュー株の具体的な探し方
- それぞれのメリット・デメリット&向いている人
私は今まで投資関連の本を100冊以上読んできました。その中で、バリュー投資について最もおすすめできる一冊を紹介します。
それがこちらです。
「50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え」

タイトルだけ見ると、よくあるインフルエンサー本のように感じるかもしれません。しかし内容は本格的で、バリュー投資の教科書といえる一冊です。
著者は個人投資家で医師の「たーちゃん」さん。もともと出版を拒んでいましたが、がんで余命宣告を受け、娘に何か残したいという想いからこの本を執筆されました。
つまりこの本は、著者が娘に送る「投資の遺言」。
50万円を50億円に増やした(出版時点では約70億円)経緯と、バリュー株投資の実践的な選定方法が惜しみなく書かれています。
今回は、この本を参考にバリュー株の3つの種類と、それぞれの具体的な投資方法を解説します。
バリュー株投資とは?
バリュー株投資とは、「本来の価値より割安な株に投資する方法」です。
「バリュー(Value)」は「価値」を意味します。では、企業の価値は何で測るのでしょうか?それは、
『企業の価値 = 保有資産 + 将来の利益』です。
本書ではさらに踏み込んで、実際の株価は次のように評価されると説明しています。
『株価 = 保有資産 + 将来の利益 ±バイアス』
「バイアス」とは、投資家たちの偏見やノイズのことです。例えば「この企業は絶対上がる」「将来性がない」といった感情的な判断です。

本当の企業価値を把握するには、このノイズを排除して正しく評価する必要です。本書では、その具体的な指標と数字、実体験が詰まっています。
バリュー株投資の3つの種類
バリュー投資には、何と比べてバリュー(割安)なのかによっていくつか種類があります。
本書はバリュー株投資を以下の3種類に分類しています。(というか、この3つしかありません)
- 資産バリュー株投資
- 収益バリュー株投資
- シクリカルバリュー株投資
ざっくり分けると次の表になります。それぞれ難易度とリターンが異なっているのか特徴です。
| 種類 | 難易度 | リターン期待度 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 資産バリュー株 | 低 | 低〜中 | 保有資産に対して割安 |
| 収益バリュー株 | 中 | 中 | 収益力に対して割安 |
| シクリカルバリュー株 | 高 | 高 | 景気の谷で仕込む |
著者のたーちゃんさんは「資産バリュー株10%、収益バリュー株10%、シクリカルバリュー株80%」の割合で資産を築いたとのことでした。
それでは、それぞれの投資方法を詳しく見ていきましょう。
①資産バリュー株投資
資産バリュー株とは?
資産バリュー株とは、「PBR(株価純資産倍率)が低く、財務内容が良好で、保有資産の価値が高い株」のことです。
PBR(株価純資産倍率)は株式投資の基本指標です。PBRが1倍未満なら、その企業を今清算しても資産が残っている状態を意味します。

例えるなら、メルカリで財布の中に1万円が入ったまま5,000円で売られているようなもの。保有資産に対して割安で放置されている状態です。
じゃあなぜ見過ごされているのか?
その大きな要因の一つはとして、上場企業は有価証券報告書に「取得時の安い資産価額」を記載すればよいというルールがあるからです。
つまり、何十年も前に安く買った土地が、現在は何倍もの価値になっていても、帳簿上は安いまま記載されているのです。
本書では、資産380億円を有する企業が時価総額800万円で放置されていた事例も紹介されています(現在は上場廃止)。
資産バリュー株は、
- 昔からある会社が狙い目で、
- 設立年度が古いほど期待値が高く
- 工場などの広い土地を保有している企業が有望
です。
資産バリュー株投資のメリット・デメリット
- 市場暴落時の下落幅が相対的に小さい
- 資産価値が見直されると大きな利益が狙える
- 配当利回りが高い銘柄が多い
- 割安のまま長期間放置される可能性(バリュートラップ)
- 企業の成長性は低い傾向
- 企業分析に手間がかかる
著者は「ある程度資産が貯まってきて、手堅く投資したいときに活用すべき」と述べています。つまり、資産バリュー株投資は、リスクを抑えてゆっくり資産を増やしたい人向けの投資法です。
資産バリュー株の探し方(7ステップ)
それでは、本書で書かれている資産バリュー株の探し方を紹介していきます。
資産バリュー株の探し方は次の7ステップです。
ステップ①:スクリーニング
- PBR 0.5倍以下
- 自己資本比率 60%以上
- PER 12倍以下
※証券会社のアプリや株式情報サイトで検索をかけます。
ステップ②:創業年チェック
- 創業年が古い企業を優先的にチェックします。
ステップ③:有価証券報告書を入手
- 株式情報サイトや企業のIRページから入手できます。
ステップ④:取得時の価額をチェック
- 固定資産(有形・無形資産)の「注記」や「有形固定資産の増減」に取得価額が記載されています
- 投資有価証券は、貸借対照表の「その他有価証券の含み益・含み損」を確認
ステップ⑤:現在の価額をチェック
- 時価評価がある資産(上場株式、不動産など)→時価評価の記載を確認
- 時価評価がない資産(非上場株式、自社利用不動産など)→類似資産の市場価格やキャッシュフローから推測
ステップ⑥:乖離を分析
- 時価評価 > 取得価額 → 含み益あり(企業価値が過小評価されている可能性)
- 時価評価 < 取得価額 → 含み損あり(資産価値が過大評価されている可能性)
- 減損処理の有無も重要なポイント
ステップ⑦:企業戦略と市場環境を考慮
- 不動産を大量保有する企業で「取得価額」と「時価評価」に大きな差がある場合、今後の売却戦略や資本政策に影響する可能性があります。
活用のポイント
- 【投資判断】:割安かどうか見極める
- 【経営リスクの評価】:減損リスクをチェック
もっと具体的で詳細な説明は本書に譲ります。(実際の決算資料などを使って詳しく丁寧に手取り足取り解説してくれています)
次は収益バリュー株投資について解説していきます。
②収益バリュー株投資
収益バリュー株とは?
収益バリュー株とは「PER(株価収益率)が低くて、業績が安定的に伸びている株」のことです。つまり、業績が伸びているのに、その稼ぐ力(収益力)が低く見積もられている銘柄です。
収益バリュー株が多い業界は次のとおりです。
- 銀行・金融
- 商社
- 鉄鉱
- 自転車
- 海運
- 電力・ガス
- 建設
- 医薬品
収益バリュー株の銘柄は、業績が安定、利益に対して株価が割安と評価される企業が多いのが特徴。景気が多少変動しても、業績が比較的安定しているケースが多いです。
収益バリュー株投資のメリット・デメリット
- 業績が安定している企業が多い
- 配当利回りが高いことが多い
- 市場の評価が正常化すれば大きな値上がりが期待できる
- 初心者でも理解しやすい
- 割安なまま長期間放置されることがある
- 成長の「伸びしろ」が限定的な場合も
- 短期では成果が出にくい
- 決算書と指標を読むスキルが必要
個人的には、資産バリュー株投資より直感的にわかりやすい投資法だと感じました(簿記の知識があるとさらに理解しやすいです)。
収益バリュー株の探し方(4ステップ)
収益バリュー株の探し方は次の4ステップです。
ステップ①:スクリーニング
- 営業利益率 10%以上
- PER 10倍以下
- PBR 1.5倍以下
- ROA(総資産利益率)7%以上
- 時価総額 300億円以下
※私はMINKABUというサイトでスクリーニングしています。
ステップ②:損益計算書をチェック
- 「売上高」「経常利益」「経常利益率」が長期的に右肩上がりならOK。IR BANKというサイトが一覧で見やすくておすすめです。
ステップ③:キャッシュフロー計算書をチェック
- 「営業キャッシュフロー」と「フリーキャッシュフロー」がプラスならOK。これもIR BANKで簡単に確認できます。
ステップ④:成長余地を確認
- 「これから業績が伸びていく余地があるか」を見極めます。本書では、まだ全国展開していない企業が狙い目だと紹介されています。
著者が実際に投資した例として、とんかつ専門店「かつや」を展開するアークランドサービスの全国展開ケースが挙げられています(2023年に上場廃止)。
収益バリュー株の売り時
本書では、収益バリュー株の売り時も紹介していて、次の場合が売り時です。
- 業績の成長シナリオが崩れたとき
- さらに有望な銘柄が見つかったとき
- 短期間で上がりすぎたとき
- 業績に陰りが見え始めたとき
- 営業網の全国展開がほぼ終わったとき
③シクリカルバリュー株投資
シクリカルバリュー株とは?
シクリカル(景気循環)によって株価が大きく動く株のことです。
景気の「谷」で仕込み、「山」で売却することで大きなリターンを狙います。
対象になる業界は次のとおりです。
- 鉄鉱
- 非鉄
- 鉱業
- ガラス
- 石油・石炭
- ゴム
- 化学
- 繊維
- 紙パルプ
著者いわく「昔からある古い業界」です。
シクリカルバリュー株投資のメリット・デメリット
- 景気回復局面で大きなリターンが狙える
- 市場の過度な悲観(逆張り)が利益の源泉になる
- 決算・需給が改善すると一気に評価が変わる
- 景気後退局面では長期で不調が続く
- タイミングを間違えると高値掴みで塩漬けになる
- 業績の変動幅が大きく、予測が難しい
- 綿密な分析が必要
- 購入対象となる株がない時期もある
かなり逆張り的な発想で、正確な分析と不況下で業績不振の企業に投資できる心の強さが求められます。
ただ、著者はこの手法をメインに50億円を稼いでいます。本書では「シクリカルバリュー株を見つけられるようになれば、投資人生は勝ち確定」と強い言葉で語られています。
シクリカルバリュー株の探し方(3ステップ)
細かい分析は本書にお任せするとして、ここでは基本的なシクリカルバリュー株の探し方を説明します。
シクリカルバリュー株の探し方は次に次の3ステップです。
ステップ①:景気循環を確認
- 業界が景気循環の影響を受けているか、その企業が「景気の谷」にいるかを確認します。
ステップ②:コスト構造を理解
- 有価証券報告書などから「固定費」「変動費」を分解し、利益を出す構造を理解します。
ステップ③:将来のPBR・PERを逆算
- 利益が上がった場合の「PBR」「PER」を逆算して、投資判断を行います。
本書では多くのページを割いて、具体的な探し方と分析方法が詳しく解説されています。本気でシクリカルバリュー株投資をしたい方は、何度も読み込んで自分の血肉にすること必要です。

巻末には著者が実際に使用している企業分析シートも付いているので、すぐに実践できるのも嬉しいポイントです。
まとめ:自分に合ったバリュー投資を選ぼう
今回の記事では、個人投資家たーちゃんさんの書籍「50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え」を参考にバリュー株投資の種類・特徴、実践方法を紹介しました。
- バリュー投資は「本来の価値より割安な株を買う投資法」
- バリュー株投資には3種類ある:資産バリュー株、収益バリュー株、シクリカルバリュー株
- 分析の難易度は「資産 < 収益 < シクリカル」の順
- シクリカルバリュー株が最も利益が大きい(ただし難易度も最高)
あなたに向いているのは?
- リスクを抑えて手堅く投資したい → 資産バリュー株
- 安定成長企業に投資したい → 収益バリュー株
- 大きなリターンを狙いたい(上級者向け) → シクリカルバリュー株
本のタイトルは派手ですが、内容はバリュー投資の教科書といえる充実した内容です。初心者でもステップバイステップでバリュー株投資を始められるよう、丁寧に解説されています。

私はこれまで100冊以上の投資本を読んできましたが、TOP5に入る一冊です。間違いなく「買い」です。
長くなるので詳しい説明を省きましたが、バリュー株投資を始めようと思っている人は100%参考にできる内容です。
今回の記事はこれで終わりです。この記事があなたの投資の参考になれば幸いです。
