新NISAを育てる|なぜ「何もしない」が、いちばん難しくて、いちばん重要なのか?
「銘柄も決めた。口座も開けた。積立も設定した。」
ここまで来た方は、新NISAの大きな山を3つ、すでに越えています。
あとは毎月の積立を、「ただ続けるだけ」のはずです。
ところが、ここで多くの人がつまずきます。
新NISAでいちばん難しいのは、買うことでも、選ぶことでもなく、「続けること」です。
結論を先に書きます。
新NISAの「育てる」フェーズで、いちばん難しくて、いちばん効くのは、「何もしないで、ただ持ち続けること」です。
派手な売買でも、銘柄の入れ替えでも、暴落の見極めでもありません。むしろ、その逆。動かない人だけが、20年後に大きな差を受け取ります。
世界の名著の中でも、特に有名なチャールズ・エリスの『敗者のゲーム』には、こんな言葉があります。
「稲妻が輝く瞬間に、市場に居合わせなければならない」――。
この言葉の本当の重さを、本記事の中盤で、データと一緒にゆっくり見ていきます。
派手な勝負ではありません。ゆっくり、でも確実に。
「育てる」フェーズで自分を裏切らないための仕組みと心構えを、私自身の200万円を吹き飛ばした失敗もふくめて、ゆっくりほどいていきます。

こんにちは!救急隊長しんです。
大阪で17年以上、消防士として働いていて、そのうち10年以上を救急隊長として現場に立ってきました。
40代、奈良で妻と息子2人と暮らす4人家族、住宅ローン35年もち。
2020年から新NISAでインデックス投資、日本の高配当株、仮想通貨を組み合わせて運用しています。
今日は「投資をやめたくなる瞬間」とどう付き合うか。当時の自分にも教えてあげたいことを書いていきます。
- なぜ「何もしない」が、育てるフェーズでいちばん難しくて、いちばん効くのか
- 20年続けた人と3年でやめた人に、約500万円の差がつく仕組み(同じ毎月3万円でも)
- 暴落の日にやってはいけない3つと、やっていい1つ
本記事は、コツカブの「40代から始める新NISA」シリーズのSTEP⑤「育てる」にあたります。
銘柄選び(STEP③)と口座開設(STEP④)まで終えた人が、その後20年、自分を裏切らずに積立を続けるための章です。
- なぜ「育てる」が、新NISAでいちばん難しいフェーズなのか
- 20年続けた人と3年でやめた人の、500万円の差|同じ毎月3万円でも
- いちばんのリスクは”市場”ではなく”自分の手”|過去40年の事実
- バフェットも同じことを言っていた|100ドルが490倍になった84年
- 暴落は”事故”ではなく”季節”|30年で何度も来ている
- 暴落の日にやってはいけない3つ・やっていい1つ
- SNS・YouTubeとの距離の取り方|他人の損益は、他人のもの
- 続けることへの5つの不安への、私なりの答え(FAQ)
- まとめ:育てた先に見えるのは「お金」より「気にしない自分」
- 次のSTEP⑥へ|配当金で「広げる」フェーズ
- あわせて読みたい
- 参考書籍・出典
なぜ「育てる」が、新NISAでいちばん難しいフェーズなのか

STEP④までで、銘柄選び・口座開設・最初の積立設定まで終えた人は、新NISAの土台をすでに作り終えています。
ここまでは、知識と作業の世界です。
情報を集めて、納得して、手を動かせば終わります。
ところが、ここから先のフェーズはまったく性格が違います。
「育てる」フェーズで戦う相手は、市場ではなく、自分の心です。
具体的にどんな心が出てくるか。たとえば、こんな声です。
- 含み益が出ているうちに、いったん利確しておきたい
- 含み損が出てきて、これ以上下がる前に売っておきたい
- SNSで「100倍になった」と書いている人を見て、自分もチャレンジしたくなる
- 何か月積み立てても全然増えていない気がして、別の手段を試したくなる
新NISAをやめてしまう理由のほとんどは、銘柄が悪かったわけでも、制度が変わったわけでもありません。
「自分が、自分の手で、売ってしまう」というだけなんです。
世界の名著は、ほぼ全部、ここを言っています。
投資家にとっての最大の敵は、たぶん自分自身である。
ベンジャミン・グレアム『賢明なる投資家』
この市場で勝つために、特別な才能はいらない。必要なのは、ミスを減らすこと。それだけだ。
チャールズ・エリス『敗者のゲーム』
つまり、買うかどうか・選ぶかどうかは、テクニックでなんとかなります。
でも、続けるかどうかは、仕組みと心構えでしか乗り越えられない。
このSTEP⑤は、そのための章です。
「育てる」と書いていますが、ほんとうに育てているのは銘柄ではなく、自分自身だと思っています。
20年続けた人と3年でやめた人の、500万円の差|同じ毎月3万円でも

具体的な数字で見ていきます。
細かい前提を置かずに、ざっくり感覚をつかむ程度に読んでください。
シミュレーションの前提(同じ毎月3万円を、20年積み立てる)
2人の積立額は、20年間まったく同じ「毎月3万円」です。違うのは、3年目以降の置き場所だけ。
- Aさん(続けた人):20年間ずっと、新NISAで毎月3万円を積立。年5%で運用
- Bさん(3年でやめた人):最初の3年は新NISAで積立。その後の17年間は「投資は怖い」とやめて、毎月3万円を銀行の普通預金(年0.3%)で積立
※想定リターン:新NISAは年5%(インデックスファンドの長期平均的な目安)/銀行普通預金は年0.3%(2026年2月以降のメガバンク普通預金水準)※新NISA口座なので、運用益への課税はなし。分配金・配当は再投資(オルカン・S&P500の投資信託は通常そう)※税引前・手数料考慮なしの概算。
| 経過年数 | Aさん (NISA継続・年5%) | Bさん (3年でやめて銀行積立・年0.3%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 3年 | 約116万円 | 約116万円 | 0円 |
| 5年 | 約204万円 | 約188万円 | +16万円 |
| 10年 | 約466万円 | 約369万円 | +97万円 |
| 15年 | 約802万円 | 約560万円 | +242万円 |
| 20年 | 約1,233万円 | 約750万円 | +483万円 |
ここで大事なのは、2人とも、20年間まったく同じ720万円を入金しているということです。
毎月3万円。途中でサボっていません。
違うのは、3年目以降の置き場所が「新NISA」か「銀行普通預金」かだけ。
たったそれだけで、20年後の評価額には約483万円の差が生まれます。
3年目までは、AさんもBさんも、評価額はほぼ同じ約116万円です。
ところが、5年目で約16万円、10年目で約97万円、15年目で約242万円――そして20年目で約483万円。
差が「指数関数的」に広がっていくのが、表を見ると一目でわかります。
この差、ざっくり500万円のほとんどは複利の力です。
ただ、買い続ける。これが、長期投資のいちばん強い武器だ。
複利の本気は、10年目あたりから出てきます。
最初の3〜5年は、正直、退屈です。AさんとBさんの差もまだ16万円〜97万円程度。「どっちでも変わらないじゃん」と思ってしまうレベルです。
ここで多くの人がやめます。
そしてやめた瞬間に、その後の17年に効いてくる「複利の山」を、ほぼ全部、自分の手で捨てることになります。
銘柄選びの差や入金額の差より、「途中で売らずに、置き場所を変えなかったかどうか」の差のほうが、最終的にずっと大きい。
これが、STEP⑤の最初の事実です。

「3年でやめた人」って、実は周りにけっこういます。「投資は怖いから貯金に戻した」って人。決して怠けてるわけじゃない。毎月3万円、ちゃんと積み立て続けているんです。
それでも、20年経ったときに約483万円の差が出る。これ、利回りの差じゃありません。
「途中で投資をやめた」という、たった一つの判断の差です。
最初の3年を耐えた人だけが、その先の17年を受け取れる仕組みなんですよね。
いちばんのリスクは”市場”ではなく”自分の手”|過去40年の事実

もうひとつ、よく引用されるデータを紹介します。
米国の投資調査会社 DALBAR が、毎年「投資家の平均リターン」と「市場全体のリターン」を比較した調査を出しています。
過去30〜40年のデータを、ざっくり言うとこうです。
- 市場(S&P500など)の年率リターン:約10%
- 同じ期間の投資家本人の平均リターン:約4〜6%
市場は10%増やしてくれているのに、投資家本人は半分くらいしか取れていない。
なぜか。答えはシンプルです。
多くの人は、暴落で売って、回復してから買い戻すからです。
下がったところで売ってしまい、上がってから買い戻す。
これを2〜3回繰り返すと、本来取れたはずのリターンが、半分くらい削れていきます。
削っているのは、市場ではありません。自分の手です。
『敗者のゲーム』の名フレーズ|稲妻が輝く瞬間に、居合わせよ
このことを、1985年の初版から40年近く読み継がれている名著、チャールズ・エリスの『敗者のゲーム』が、ずっと前から書いています。
本書の中でいちばん有名な一節が、これです。
つまり、上昇する期間は「稲妻が輝く一瞬」のようなものです。その瞬間に相場に居合わせておかなければ、そのリターンを享受することができないのです。
聞いたことがある方も多いはずです。
投資の世界では、定番中の定番のフレーズです。
でも、本当の重さは、引用だけだとなかなか伝わりません。
本書に登場する、有名なデータを一緒に見てみます。
ベスト10日を逃すだけで、リターンは半減する
『敗者のゲーム』には、米国S&P500を使った、こんなデータが紹介されています。
1980年1月から2016年4月までの約36年間、S&P500に投資し続けた場合の年率リターンは、11.4%でした。
ところが、その36年のうち、株価が大きく上昇した「ベストの数日」を逃しただけで、リターンはこんなふうに削られていきます。
| 逃した日数 | 年率リターン | フルインベストとの差 |
|---|---|---|
| 0日(ずっと持ち続けた) | 11.4% | ― |
| ベスト10日を逃した | 9.2% | −2.2% |
| ベスト20日を逃した | 7.7% | −3.7% |
| ベスト30日を逃した | 6.4% | −5.0% |
36年は、おおよそ9,000営業日あります。
そのうちの、たった10日を逃すだけで、年率リターンが11.4%から9.2%に。
たった30日逃せば、6.4%まで落ちる。
つまり、9,000日のうちの0.3%に当たるか外すかで、20〜30年後の資産はまったく別物になる、ということです。
そして、もっとも大事なポイントはここから。
その「稲妻が輝く瞬間」は、たいてい暴落の直後にやってきます。
歴史を振り返ると、株価が一日で大きく上がった「ベストの日」は、たいていリーマンショックやコロナショックのような暴落のすぐ後に集中しています。
理由は単純で、暴落で投げ売られた後、市場が「行きすぎだった」と気づいて急反発するからです。
つまり、こういう構図が成立します。
⚡️「稲妻が輝く瞬間」が教えてくれること
- 暴落で怖くなって売る → 直後の急反発(=稲妻)を逃す
- 稲妻を逃す → 20年・30年単位のリターンが、半分以下になる
- つまり、「暴落で売る」という一回の判断が、その後の数十年の複利を半分捨てる判断になっている
- これを避ける唯一の方法は、「ずっと持ち続ける」=「何もしない」こと
「何もしない」は、だらしなさではありません。
むしろ、40年近く読み継がれている世界の名著が、データで証明している、いちばん高度な投資戦略です。

6年やってみて、私もこの「自分の手で半分損する」感覚は、痛いほどわかります。
2020年のコロナショックで日経平均が一気に1万6,000円台まで落ちた日、私は救急現場でコロナ対応に追われていました。
正直、スマホで株価を見る暇すらなかった。
それでも給料は毎月変わらず振り込まれていたので、淡々と買い増しを続けるしかなかったんです。
その後、世界の株価はみるみる戻りました。
あのコロナショックの底からの数日が、まさに『敗者のゲーム』が言う「稲妻が輝く瞬間」だったんだと、後から気づきました。
忙しくて何もできなかったことが、結果として、私の資産を守ってくれたんです。
つまり、新NISAでもっとも大事なリスク管理は、銘柄選びでも、タイミング読みでもありません。
「自分の手で売らない、稲妻の瞬間に必ず居合わせる仕組みを、どう作るか」です。
これが、この記事の前半のキーワードになります。
バフェットも同じことを言っていた|100ドルが490倍になった84年

「稲妻が輝く瞬間に居合わせよ」というエリスのメッセージを、もっとシンプルに、もっと骨太に語ったのが、ご存じウォーレン・バフェットです。
彼が2018年のバークシャー・ハサウェイ株主総会や、その後のインタビューで何度も語ってきた、有名なエピソードがあります。
趣旨をまとめると、こうです。
私が初めて株を買った1942年、ダウ平均は約100ドルでした。それが今や(2018年当時)2万ドルを超えています。
この間にアメリカはいくつもの戦争を経験し、大恐慌のような不況もあり、テロもありました。しかし、ただアメリカという国に賭けて持ち続けてさえいれば、100ドルが2万ドルになったのです。
これほどまでに追い風が吹いている中で、一体どうすれば投資で失敗(損)なんてできるというのでしょうか?ウォーレン・バフェット(2018年バークシャー・ハサウェイ株主総会・株主への手紙より)
そして、本記事をお読みいただいている2026年5月現在、ダウ平均は約49,000ドルです。
1942年の100ドルから、約490倍。バフェットがこの言葉を語った2018年からも、さらに2倍以上に増えています。
84年間で490倍。これを年率に直すと、年7.65%。
新NISAで「年5%」と仮定したシミュレーションよりも、さらに分厚い数字です。
バフェットが指摘する「投資家が損する2つの理由」
これだけ強烈な追い風が吹き続けている市場で、なぜ多くの投資家が損をしてしまうのか。
バフェットの発言を整理すると、その理由はシンプルに2つに集約されます。
📌バフェットの発言から整理する、投資家が損する2つの理由
- ① 頻繁に売買しすぎる(余計なコストを払う)
- 売買のたびに手数料・税金・スプレッドなど、目に見えにくいコストを払い続けることになります。長期で見ると、これがリターンを大きく削ります。
- ② 市場のパニックに動揺して、安値で投げ出してしまう
- コロナショック、リーマンショック、ITバブル崩壊。歴史的暴落のたびに、多くの人が「これ以上下がる前に」と売り、その直後の急反発を取り逃がしてきました。
気づいた方も多いと思いますが、これは『敗者のゲーム』が「稲妻が輝く瞬間を逃すな」と言っていることと、まったく同じです。
世界トップの投資家と、40年読み継がれる名著が、まったく同じ結論に辿り着いている――これが、新NISAを「育てる」フェーズの最大のヒントです。

「パニックで何かしたくなるとき」こそが、いちばん何もしてはいけない瞬間。バフェットが言っているのは、たぶんそういうことです。
そしてもうひとつ、バフェットの言葉でいちばん大事なのは、最後の問いかけだと思っています。
「これほど追い風が吹いている中で、どうすれば損ができるというのか?」
裏返すと、こういうことです。
右肩上がりの市場で損をする方法は、たった一つ。
「自分からやめる」こと。
やめなければ、追い風はずっと吹き続けてくれます。
暴落は”事故”ではなく”季節”|30年で何度も来ている

「暴落は怖い」と多くの方が言います。私もそう思います。
ただ、ひとつだけ知っておくと、心の負担が一気に軽くなることがあります。
暴落は、20〜30年に一度くらいの「特別な事故」ではありません。
5〜10年に一度くらいの頻度で来る、普通の「季節」です。
過去30年ほどで、世界の株式市場が大きく揺れた局面を、ざっくり並べてみます。
| 年 | 出来事 | 大まかな下落幅 (米国株・ピークから底まで) |
|---|---|---|
| 1990〜91年 | 湾岸戦争 | 約 −20% |
| 2000〜02年 | ITバブル崩壊 | 約 −49% |
| 2007〜09年 | リーマンショック | 約 −56% |
| 2011年 | 欧州債務危機 | 約 −19% |
| 2015〜16年 | チャイナショック | 約 −15% |
| 2018年 | 米中貿易摩擦 | 約 −19% |
| 2020年 | コロナショック | 約 −34% |
| 2022年 | 利上げ・地政学リスク | 約 −25% |
| 2025年4月 | 関税ショック(一時的) | 約 −15% |
10〜20%級の下落は2〜3年に一度。
30%を超える大きな下落も、10年に一度くらいは来ています。
つまり、新NISAを20年続けるなら、30%級の暴落は2〜3回経験する前提で組まなければいけない、ということです。
ここで頭の置き方を変えると、暴落とのつき合い方は一気に楽になります。
暴落を「想定外の事故」として捉えると、毎回パニックになります。
でも、「冬が来た」と捉えれば、ジャケットを着て、家でじっとしているだけで済みます。
冬は、いつも、必ず春になります。
リスクとは、何かを失う可能性があるということだ。それは消すものではなく、認めて、付き合うものだ。
ハワード・マークス『投資で一番大切な20の教え』
ハワード・マークスは、この本の中で何度も「リスクは消せない」と書いています。
消そうとするのではなく、「あること」を認めて、「来たとき」の自分の動き方を先に決めておく。
これが、世界トップの投資家がそろって言っていることです。
暴落の日にやってはいけない3つ・やっていい1つ

具体的に、暴落の日にどうふるまえばいいか。
6年運用してきた中で、私自身が決めている「自分ルール」がこちらです。
💡暴落の日に、やってはいけない3つ
- ① 保有しているインデックスを売る
- 暴落で売るのは、市場の安値で確定損を出す行為。「20年の複利の山」を、自分の手で消すことになります。
- ② 積立をやめる、減らす
- 積立は、価格が下がっているときにこそ効く仕組み(ドルコスト平均法)。下がっているときに止めるのは、もっとも安く買える季節を、自分で逃すことです。
- ③ 別の銘柄に乗り換える
- 「これは下がっている、別ので取り返したい」――これが、いちばん多くの人が損する典型パターンです。
💡暴落の日に、やっていい1つ
- ✅ 何もしない
- ログインしない。ニュースを閉じる。SNSを閉じる。家族と過ごす。よく寝る。本を読む。散歩に出る。
これが、過去のデータを見るかぎり、いちばんリターンが高い「行動」です。
「何もしない」は、聞くと拍子抜けする戦略です。
でも、本記事の前半で見た『敗者のゲーム』のデータが、これを裏づけています。
暴落で売ってしまうと、直後の急反発――つまり「稲妻が輝く瞬間」を逃す。
稲妻を逃すと、20年・30年単位のリターンが半分以下になる。
だから、暴落の日に取れるいちばんリターンの高い「行動」は、何もしないことなんです。
実際、私は2020年のコロナショックも、2022年の利上げ局面の急落も、2025年4月の関税ショックも、特に何もしませんでした。
正確に言うと、「忙しくて、何もできなかった」のほうが正解です。
その結果、稲妻が輝いた瞬間にも、ちゃんと市場に居合わせていました。
含み益はしっかり積み上がっています。
特別な才能ではありません。むしろ、何もしなかったことが、いちばん効きました。

「何もするな」と言われても、難しいですよね。スマホを開けば値段が見えてしまう。意志の力で耐えるのは、しんどい。
だから次章では、そもそも「見なくて済む仕組み」をつくる話をします。
意志の力ではなく、設定で勝つ。これが、本業のある40代にとっていちばん現実的な戦略です。
SNS・YouTubeとの距離の取り方|他人の損益は、他人のもの

ここから先は、暴落より地味で、でも、もしかしたら暴落より厄介な相手の話です。
SNS・YouTubeとの付き合い方です。
投資を始めると、自然とX(旧Twitter)やYouTubeで投資情報を見る機会が増えます。
これ自体は悪いことではありません。
ただ、見すぎると、ひとつだけ確実に起きる現象があります。
「自分の積立が、すごく地味に思えてくる」現象です。
タイムラインには、こういう投稿が並びます。
- 「○○コインで一撃3倍」
- 「レバナス1年で+100%」
- 「個別株10倍株を当てた」
- 「FXで1日100万円」
毎月3万円のオルカン積立は、こういう投稿の隣に置かれると、本当に地味です。
そして、人は地味さに耐えられない生き物です。
ここから、こういう思考が出てきます。
- 自分も少しだけ、刺激のある銘柄に分散してみようかな
- ちょっとだけレバレッジを入れてもいいかも
- 来月のNISA枠は、別の派手な銘柄に振ってみようかな
正直に書きます。
私は数年前、まさにこのルートで、約200万円を吹き飛ばしました。
しん

私は数年前、海外大手取引所のFTX(今はもうない取引所です)で、仮想通貨FXに手を出して、約200万円ぶっ飛ばしました。
最初は2〜5倍の慎重なレバレッジで始めたつもりが、勝ち負けを繰り返すうちに、最後は欲に目が眩んで100倍。
気づくと、夜中もチャートを見続けて、本業の救急現場に立つのが怖くなるくらい体調を崩していました。
あれの最大の引き金は、ぜんぶSNSの「一撃1億」報告でした。
「他人の損益は、他人のもの」。
これがどれだけ簡単に言えて、どれだけ守るのが難しいかは、骨身に染みています。
具体的な距離の取り方は、こんな感じです。
💡SNS・YouTubeと健全に付き合う4つのコツ
- ① 投資系SNSのフォローは、淡々として煽らないアカウントだけにする
- 「億り人」「一撃」「逆張り」を多用するアカウントは、長期投資家の心には合いません。
- ② YouTubeで「年利30%」「億り人」のサムネが続いたら、視聴履歴を切る
- おすすめアルゴリズムは「あなたが見たもの」を増幅します。一度切ると、世界は静かになります。
- ③ 自分の運用を見るのは、月1回だけにする
- 価格は毎日動きますが、長期投資の本質は20年単位。毎日チェックする意味はありません。
- ④ 比べるのは、他人ではなく「3年前の自分」
- 3年前、自分は何もしていなかった。今は新NISAを毎月積んでいる。これだけで十分、前進しています。
特に4つ目が大事です。
「3年前の自分」と比べれば、たとえ含み損が出ていても、確実に前進しているのが見えます。
他人と比べると、いつまでも「足りない」が続きます。
ここまで読んでくれた方は、たぶんこう思っているはずです。
「言っていることはぜんぶ正論。でも、実際に続けるとなると、いろんな不安が出てくる」
そのとおりです。だから次は、私自身もよく聞かれる、5つの具体的な不安に答えていきます。
続けることへの5つの不安への、私なりの答え(FAQ)

最後に、私自身も読者の方からよく聞かれる、5つの不安に答えます。
Q1. 暴落で、新NISA口座の評価額が一時的にマイナスになるのが怖いです。
A. その「怖さ」は、長期投資家全員が通る道です。
含み損は、確定するまで損失ではありません。「画面上の数字が一時的に赤い」だけです。
20年積み立てる前提なら、途中で含み損になる時期は2〜3回必ず来ます(前述の暴落表のとおり)。
大事なのは、その期間に「数字を見ない・売らない・積立を止めない」を徹底すること。それだけで、後半の複利の山にちゃんと辿り着けます。
Q2. 子どもの教育費がかかる時期は、積立を減らした方がいいですか?
A. 「ゼロ」にはせず、「減額」で乗り切るのが鉄則です。
家計が苦しくなったときに、いちばんやってはいけないのが「新NISAをいったん全部止める」です。
いったん止めると、再開の心理的ハードルが想像以上に高い。半年・1年と空白が伸び、気づくと「もうやめた」になりがちです。
家計に余裕がなくなったら、毎月3万円を1万円や5,000円に減額すれば十分です。
金額より、「続いている」という事実のほうが10倍大事です。
教育費のピークが過ぎたら、また3万円に戻せばいい。それだけです。
Q3. 含み益が出てきました。いったん利確した方がいいですか?
A. 新NISAで利確しても、税金は増えません。でも、複利は確実に小さくなります。
新NISAは非課税口座なので、利確しても税金は0円。これは大きなメリットです。
ただし、利確して現金にした瞬間、その分の「複利の元手」も減ります。
たとえば300万円の評価額があるとして、それを利確して使ってしまうと、その300万円が20年後に生むはずだった約800万円分の複利も、一緒に消えます。
使う予定がない含み益なら、「触らない」が原則です。「使う目的が決まっているお金」だけを、必要なときに必要な分だけ取り崩すのが、新NISAのいちばん賢い使い方です。
Q4. 別のファンド(テーマ型・新興国・レバレッジ型)に乗り換えたくなります。
A. 99%のケースで、乗り換えは負けます。
「乗り換えたくなる」とき、人は過去のリターンを見ています。
でも、過去に強かったテーマが、これからも強いとは限りません。むしろ、「これから来る」と言われたテーマほど、すでに割高なことがほとんどです。
レバレッジ型は特に注意してください。
長期で持つほど「逓減」というしくみで、原資産より下振れしやすい商品設計です。20年持てば持つほど、不利になります。
どうしても気になるテーマがあるなら、新NISA枠の外で、月数千円から「お試し」してみてください。
新NISAの主軸(オルカンやS&P500)には、絶対に触らない。これが鉄則です。STEP③『新NISAで何を選ぶ|なぜ「オルカンとS&P500」の2択で十分なのか?』もあわせて読んでみてください。
Q5. 「今は高値だから買うな」と言う人がいます。やめた方がいい?
A. その人は、5年前も10年前も「高値だ」と言っていた可能性が高いです。
S&P500もオルカンも、長期で見れば右肩上がりです。
つまり、過去のどの時点で見ても、当時の人にとっては「歴史的高値」でした。
「高値だから買わない」を続けていたら、5年前も10年前も買えていない――ということになります。
新NISAの積立は、「高値で買う日」と「安値で買う日」を平均化していく仕組み(ドルコスト平均法)です。
個人投資家にできるいちばん負けにくい戦略は、「タイミングを当てる」ではなく、「タイミングを当てなくても済む仕組みに乗る」ことです。
「今は買うな」と言う人の声より、毎月の自動積立の設定のほうを信じてください。
まとめ:育てた先に見えるのは「お金」より「気にしない自分」

ここまで読んでくれた方は、もうお気づきかもしれません。
新NISAの「育てる」フェーズで、私たちが本当に育てているのは、銘柄ではなく、自分自身です。
- 暴落のニュースを見ても、肩で受け流せる自分
- 他人が短期で儲けたと聞いても、自分の積立を続けられる自分
- 含み益が出ても、利確しないでいられる自分
- そして何より、毎月の積立を「忘れていられる」自分
ここまで来ると、もう、お金そのものよりも、「気にしない自分」のほうが大きな財産になっている気がします。
20年続けた人と3年でやめた人の差は、最終的には約500万円の数字で出てきます。
同じ毎月3万円を積み立てているのに、です。
その差の本当の正体は、利回りでもなく、入金額でもなく、「稲妻が輝く瞬間に、たまたま市場に居合わせていた」という、それだけの事実です。
そしてその「居合わせた」を作るたった一つの方法は、毎日のように「何もしない」を選び続けることだけ。
派手ではありません。退屈ですらあります。
それでも、世界中の投資や名著がそろってこの戦略を勧める理由は、データがそう言っているからです。
しん

コツカブのキャッチフレーズは、「ゆっくり、でも確実に。」です。
派手な勝負を避けて、「育てる」フェーズで自分を裏切らない。
その積み重ねがいつか、家計の小さな安心になって帰ってくる。
そのくらいの感覚で十分です。
人生を大きく変える必要はありません。少しの工夫を、長く続けるだけ。
ぼくらの世代の最適解は、たぶん、ここにあります。
- 新NISAでいちばん難しくて、いちばん効くのは「何もしないで持ち続ける」こと
- 同じ毎月3万円を積み立てても、20年続けた人と3年でやめて銀行積立に切り替えた人で約500万円の差がつく(年利5% vs 0.3%)
- リスクは”市場”ではなく”自分の手”。暴落で売る人は「稲妻が輝く瞬間」を逃す
- 暴落は事故ではなく季節。20年で2〜3回は来る前提で組む
- SNS・YouTubeとの距離を保ち、他人の損益と比べない
次のSTEP⑥へ|配当金で「広げる」フェーズ

ここまでで、新NISAの土台はもう、完成です。
銘柄も、口座も、続け方の仕組みも、暴落への構え方も、SNSとの距離も。
あとは、20年後の自分に向けて、淡々と続けていくだけです。
そしてもしどこかのタイミングで、「インデックスの土台ができたから、そろそろ”配当金”でじわじわ広げてみたい」と感じたら、次のSTEP⑥に進んでみてください。
STEP⑥は「広げる」フェーズ。
インデックス投資をベースにしたうえで、日本の高配当株でじわじわキャッシュフローを増やす話を書きます。
私がインデックスと並行して6年続けてきた、もうひとつの柱です。
▶ STEP⑥(公開予定):日本の高配当株で「広げる」
あわせて読みたい
- ▶ STEP①:お金の正体を知ろう|なぜ「貯金だけ」の人は、静かに確実に資産を失い続けるのか?
- ▶ STEP②:投資の最適解を考える|なぜ「インデックス投資」が最強なのか?
- ▶ STEP③:新NISAで何を選ぶ|なぜ「オルカンとS&P500」の2択で十分なのか?
- ▶ STEP④:新NISAの始め方|SBI証券で口座開設する5ステップ|スマホ5分でOK
- ▶ 【完全ガイド】40代から始める新NISAロードマップ
- ▶ 【要約】書籍「JUST KEEP BUYING」の重要ポイント7選を解説
本記事を読んで、まだ口座を開けていなかった方は、まず「とりあえず証券口座だけ作っておく」のがおすすめです。
入金や積立設定は、口座が開いてから落ち着いて決めれば大丈夫です。
参考書籍・出典
参考書籍
- ニック・マジューリ『JUST KEEP BUYING ── 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ダイヤモンド社)
「ただ、買い続ける」が長期投資の最強の武器であることを、データで裏づけた一冊。本記事の核となる思想の出典。
- チャールズ・エリス『敗者のゲーム[原著第8版]』(日本経済新聞出版)
本記事の核となる「稲妻が輝く瞬間」の出典。S&P500を1980年1月から2016年4月まで持ち続けた場合の年率リターンは11.4%。ところが上昇率ベスト10日を逃すと9.2%、ベスト30日を逃すと6.4%まで落ちる――というデータで、「ずっと持ち続ける」ことの本当の重さを証明した名著。1985年の初版から40年近く読み継がれる、インデックス長期投資の聖書とも呼べる一冊。
- ハワード・マークス『投資で一番大切な20の教え』(日本経済新聞出版)
「リスクは消すのではなく、認めて付き合うもの」。暴落への向き合い方を、世界トップの投資家がやさしくほどいてくれる。
- ベンジャミン・グレアム『賢明なる投資家』(パンローリング)
「投資家にとっての最大の敵は、たぶん自分自身である」の出典。1949年の名著が、SNS時代にこそ刺さる。
バフェット引用について
本記事「バフェットも同じことを言っていた」のセクションで紹介したバフェットの言葉は、2018年バークシャー・ハサウェイ株主への手紙および同年の株主総会での発言の趣旨をまとめたものです。直接の原文引用ではなく、要旨として掲載しています。
数字の出典・参考リンク
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト
- 日本経済新聞「3メガバンク、普通預金金利0.3%に」(銀行普通預金の金利水準の根拠)
- DALBAR公式 https://www.dalbar.com/
- SBI証券 公式サイト
※本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。制度・金利・株価は変更される可能性があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
※本記事に記載のシミュレーションは税引前・手数料考慮なしの概算であり、実際の運用成績を保証するものではありません。投資判断は最終的にご自身の責任でお願いします。
